鹿門先生文集
鹿門先生文集2025
About this book
「おらが春」小林一茶(こばやし いっさ、1763(宝暦13)年〜1828(文政10)年)の書いた、俳句、俳文集です。一茶は、松尾芭蕉、与謝蕪村と並ぶ、江戸時代の俳諧師です。「おらが春」には、文政2(1819)年、一茶57歳の、長野県柏原で過ごした1年間が収められ、題名にもなった、「目出度さもちう位なりおらが春」の句で有名です。活字の縦書きで読める電子書籍にしました。旧字旧仮名ですが、所々、原文に寄せて新字も混じります。俳句は、ひらがなを統一した他、ほぼ原文通りです。俳句以外は適宜、漢字にしたり、ふりがなを付け、少し読みやすくしました。訳や注釈はありません。一茶自身の描いた挿絵入り。まんがタッチで妙にうまい。新春、前年生まれの娘「さと」とともに、喜び一杯に始まります。「這へ笑へ二つになるぞけさからは」おかしいような、かなしいような、様々な味わいの文章に、自身の俳句、短歌、先人の句も加え、綴られます。下ネタも入ります。「雀の子そこのけ〳〵御馬が通る」ところが6月、さとは満1歳で病死し、前後の落差に読む方も胸が痛くなります。季節は過ぎ、年の終り、なんとか心の落着きどころを見て、「ともかくもあなた任せのとしの暮」句の読みは、作者名の下クリックで。---去年(こぞ)の夏、竹植る日の頃、憂き節茂き浮世に生れたる娘、愚かにしてものに賢(さと)かれとて、名をさとゝ呼ぶ。今年誕生日祝ふころほひより、てうち〳〵あはゝ、天窓(おつも)てん〳〵、かぶり〳〵振りながら、同じ子供の風車といふものを持てるを、しきりに欲しがりてむづかれば、とみにとらせけるを、やがてむしや〳〵しやぶつて捨て、露程の執念なく、直(たゞち)に外の物に心うつりて、そこらにある茶碗を打破りつゝ、それも直(たゞ)ちに倦(うみ)て、障子の薄紙をめり〳〵むしるに、よくした〳〵とほむれば、誠と思ひ、きやら〳〵と笑ひて、ひたむしりにむしりぬ。心のうち一点の塵もなく、名月のきら〳〵しく清く見ゆれば、迹なき俳優(わざをぎ)見るやうに、なか〳〵心の皺を伸(のば)しぬ。...かく日すがら、男鹿(をじか)の角の束の間も、手足を動かさずといふ事なくて、遊び疲れる物から、朝は日のたけるまで眠る。其內(そのうち)ばかり、母は正月と思ひ、飯焚(めしたき)、そこら掃(はき)片付けて、團扇ひら〳〵汗をさまして、閨に泣聲のするを目の覺(さめ)る相圖(あいづ)と定め、手かしこく抱き起して、裏の畠に尿(しと)やりて、乳房あてがへば、すは〳〵吸ひながら、胸板のあたりを打たゝきて、にこ〳〵笑ひ顏を作るに、母は長々胎內の苦しびも、日々襁褓(むつき)の穢らしきもほと〳〵忘れて、衣のうらの玉を得たるやうに撫でさすりて、一入(ひとしほ)喜ぶ有様(ありさま)なりけらし。 蚤の迹かぞへながらに添乳哉 一茶---(のみのあとかぞえながらにそえぢかな)*目次*├序├おらが春│├第一話│├第二話│├第三話│├第四話│├第五話│├第六話│├第七話│├第八話│├第九話│├第十話│├第十一話│├第十二話│├第十三話│├第十四話│├第十五話│├第十六話│├第十七話│├第十八話│├第十九話│├第二十話│└第二十一話├跋├付録│├文政2年暦│└句索引└底本などに関する情報
Details
- First published
- 2025
- OL Work ID
- OL44500921W